銀閃の戦乙女と封門の姫 5
挿画:美弥月いつか
デザイン:木緒なち(KOMEWORKS)
高橋忠彦(KOMEWORKS)
序章
早朝まで、時刻を遡る。
第一王女エレオノーラのもとに無線で急報が届いたのは、日の出から一時間ほどが経過したころだった。
王都がモンスターの襲撃を受けた。中央公園におおきな穴があき、そのなかからキング種までもが出現したという。エレオノーラは第三機士団とともに東方の巡回に出ていた。定期的に行われる、訓練を兼ねた治安維持任務である。
こうした任務に王族が同行するのは、それが国民に歓迎されるからだ。エレオノーラたちがまとう黄金の呪式装具ジヤケツト、太陽の金サンライト・ゴールドは、このクァント=タンにおける最強の証なのである。それは常にモンスターの脅威に晒される国民にとって、なにより頼もしい太陽の輝きであった。
とはいえ、それも必ず必要というわけではない。実際、第三王女ソーニャなどは、なにかと理由をつけてよくサボる。
それでもエレオノーラは、極力、第三機士団と同行することを好んだ。
クァント=タン最大の武力たる機士団とともに、各地の有力者のもとへ顔を出すのだ。それは、またとない政治的アピールの機会である。
今回ばかりは、それが仇となった。現在王都にいる王族は、第一王子タウロス、第二王女アアフィリン、第四王女シャーロッテの三人にすぎない。しかもシャーロッテは、エーテル回路の能力が心もとなかった。
タウロスもアアフィリンも、万全の状態でノーブル種が相手ならば互角の戦いを演じられることだろう。だがキング種の強さは、ノーブル種とは比較にならないという。
王都の総合的な戦力を考えた場合、はたしてキング種の進撃を止められるだろうか。
(あとはトーマ家のカイトあたりですか。彼は民間人とはいえ、シャーロッテの言葉には従うでしょうが……所詮、王族でもなき身。どう投入したところで、決定力とは……)
無論、エレオノーラとしては希望的観測にすがりつきたいところである。
だがひとの上に立つ者として、自己の願望だけで行動を決定するなど言語道断であった。
今回も、最悪の事態を想定するべきだ、と判断する。
「王都が陥落する可能性は、どれほどですか」
エレオノーラの問いに、第三機士団の団長たる恰幅のいい褐