世界で2番目におもしろいライトノベル。
この本は縦書きでレイアウトされています。
CONTENTS
一章 認知度海抜0mの男
二章 大勇者からはにげられない
三章 アンチリリカルの魔法少女
四章 無冠の皇帝カイザー・ゼロ
五章 英雄殺しレジエンドブレイカーと遠ざかる日常
六章 最初で最後のヒーロー
七章 英雄を統べる者
終章
ダッシュエックス文庫DIGITAL
世界で2番目におもしろいライトノベル。
石原 宙
一章 認知度海抜0mの男
昼休みを終えた気だるい午後。
ついに創立100周年を迎えた県立津洲高校の教室は、戸も床も古びた木製で、長年埃やワックスを吸いこんで、甘いクッキーのような匂いがした。
かちりとチョークを粉受けに置く音がして、教科書を盾にスマートフォンでブログの更新をしていた俺は、顔を上げて黒板の問題文を見た。
〝兄弟が住む家のそばに一周2500mの池がある。
兄弟が同時に家を出発し、兄は時速5㎞で池を右回りに、弟は時速3㎞で
左回りに歩くとき、二人が出会うのは弟が何㎞進んだ地点か答えよ〟
はぁ、これだからダメなんだよ……。
四十半ばの数学教師が朗々と解説するのを聞き流し、俺は頭を振った。
常々思っていたが数学の問題にはセンスがない。
これラノベの新人賞に出したら間違いなく一次落ちだからな?
無味乾燥とした文体はキャッチーさがないし、キャラとか世界観の設定がまるで説明されないから読者が置いてけぼりになるだろ。
これ絶対評価シートに「読者目線で考えましょう」とか書かれるパターンだよ。
まずその兄弟誰なの?
なんのために池をそれぞれ反対向きに歩くの?
仲悪いの? 腹違いなの? 鳳凰星座フエニックスの一イツ輝キみたいに片方へそ曲がりなの?
二人が逆向きに歩き出すのはやむにやまれぬ家庭の事情があるとか、池を周回する目的もせめて「数奇な運命に操られ」くらい言おうよ。
あとたまに途中で急に走り出す弟とかいてすげぇ怖いから。
数学って本当そういうとこあるから気をつけた方がいいよ。
ほら、確率の問題で執拗に持ち出してくる白い玉と赤い玉とか。
秒速1㎝で動く点Pとか。
どいつもこいつも謎すぎ