俺の胃袋は彼女に握られている。
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CONTENTS
序章 血と満月の夜、彼は少女の膝小僧を舐める
第一話 吸血鬼は踊る。小学校の校舎で。
第二話 赤犬娘は美味しい
幕間 情けは人のためならず
第三話 人類の夢を平らげる話
幕間 血をすする死者たち
第四話 祝福された修道女シスターは、彼の福音となりえるか?
終章 その日、少女は吸血鬼と出会った
ダッシュエックス文庫DIGITAL
俺の胃袋は彼女に握られている。
餅月 望
序章 血と満月の夜、彼は少女の膝小僧を舐める
深夜の児童公園。
昼は子どもでそれなりに賑わうこの公園も、夜中の十二時になろうかという時刻には、しんと静まりかえっていた。
そんな公園のまん中に、一人の少年が倒れていた。
血に染まる学生服。無数に空いた小さな穴からは止めどなく、赤い血が湧き出してくる。
銃で撃たれたのは初めてだが、なるほど、こんな感じになるのか……。
ぼんやりと自らの体を眺めながら、紅亥十切は妙なことに感心していた。
痛み、というよりは熱といった感じか。ちょうど、蜂に刺されたのに似ているかもしれない。
「っと、いかんいかん。そんなことを考えている場合では、なかったな……」
近くのジャングルジムを摑み、身を起こす。
「すまんな。実は絶食十日目で、ついフラついた」
そう言って、立ち上がろうとした彼を、小さな手が押さえた。その拍子に膝が折れ、そのまま後ろに倒れこむ。
後頭部を柔らかな感触が受けとめた。温かな少女の肌の体温。華奢な太ももの、固さの残った柔らかさに、十切は、自分が膝枕をされているのだと気づく。
「大したものですね。この状況で、そんな強がりが言えるなんて……」
くすり、と……。
小さな笑い声。幼く可愛らしいその声の持ち主は、年端もいかぬ少女だった。
年の頃はようやく十を越えたかというところ。月明かりに照らし出される長く黒い髪が十切の顔に落ち、鼻先を清潔なシャンプーの香りがくすぐった。
夜空の黒を切り取ってきたような、漆黒の美しい瞳を、十切が持っていたファーストフード店の紙袋に向けて、少女は笑みを深くする。
「