不完全魔王のチート殺し2
口絵・本文イラスト/早川ハルイ
SDイラスト/桜みさき
デザイン/AFTERGLOW
編集/庄司智
■序章
運命、というものがあるのだとすれば。
それは、経過を描くものではなく、史実を作るものでもなく、思想を決めるものではないだろうか。
夢に一途であろうとする者。国や家族を守ろうとする者。使命を追いかける者。一心不乱に識ろうとする者。正義に身を費やす者。
──悪に、導かれてしまう者。
悪とは、正と反対の思想だ。
光の裏側にある陰。太陽のいない場所に潜む闇。
調和を乱す、迷惑な、負を当然とする、常人とは相対的な生き方。
つまりは、綺麗な者が存在すればこその、悪。
そして、魔王とは、そんな悪の集合体であり、頂点であり、悪を肯定するための思念。
然るに。
魔王なんて存在は、生まれた時点で憎まれ、嫌われ、呪われていて──。
では、どうしてそんなものが、生まれてしまうのか。
──思想弱者マイノリテイーなんて、捨て置けばいいのに。
調和を乱す者など、世界に不要だ。
仮に、そんな彼らに悪とならざるを得ないエピソードの一つや二つあったとしても、そんなもの存在意義にはならないだろう。
悲劇の類は、少なからず誰だって背負っているものだし、比べるものではない。
──だから、最初から生まれなければいいのに。
そうだ。最初から、存在しなければいい。
でも──それでも、芽吹いてしまったものは、どうすればいいのか。
──いくら、彼を求める人がいたからといって。
いや、違う。求める人がいるから、存在するのだ。
──あぁでも、それってなんだか。
どこか、致命的で、不完全な、矛盾があるような。
■第一章 孤島にて
とある、海に囲まれた孤島にて。
空からは灯りが消えて、世界が闇夜に染まった頃。
俺と瑠璃梨とココロは、野営地としている簡易的な居住空間で、焚き火を囲んでいた。
森林部の入り口に続く開けた土地。そこの周辺にある木々に蔓をかけ、葉のある切り枝を重ねて屋根を作り、雨を避けられるようにした、そんな空間だ。
「はぁ……しかし、こんな状況になって、もう二週間か」
椀の中身を