にっちもさっちも恋愛許可証
イラスト▼空維深夜
デザイン▼伸童舎
目次
序章
Number 1 新学期
Number 2 クラスメイトと恋愛風紀
Number 3 恋愛許可証ライセンスの効力
Number 4 愛しの恋愛許可証ライセンス
Number 5 みはしの決意
Number 6 鳴子の裏切り
Number 7 和歌子の謀反
Number 8 礼央奈の葛藤
あとがき
序章
「――ああ、愛が重い」
ったく、みはしのやつめ。
いくら幼なじみだからって、ああも四六時中付きまとわれてはかなわない。
やっぱり男子校に行って正解だった。
近ごろはもっぱら、通学時間が待ち遠しい。
「ん?」
通学路の脇を、何台ものトラックが通りすぎていく。
「今日はやけに多いな」
ショベルカー積んでるってことは、どっかで工事なのか。
朝早くから大変だな。
「おっす、善治郎」
「よう、モブ山」
じきに校門が見えるあたりで、クラスメイトと出くわした。
ちなみに、善治郎とは俺の名だ。
「まさか、モブ山に会うとは思わなかった」
「あー、期末テストがやべーからな、少しでも印象よくしようと早めに来た」
「留年とかやめてくれよ?」
「俺だって、意地でも善治郎先輩とか呼びたくねーよ。ま、進級してクラス替えしたところで、夢も希望もありゃせんけど」
「なんだ、またそれか」
「だってよ、隣に女子校があったら、未練たらたら垂れ流しだろうが。なにが悲しくて、一度きりの青春を野郎どもとフィーバーせねばならん」
「気持ちはわかるが、俺にとっては今のほうがマシだ」
「……善治郎、おまえホモだったのか」
「もうノートは見せん」
「冗談だ冗談。あれだろ、幼なじみから逃げてるんだっけ? 贅沢な話だよな」
「モブ山は知らないから言えるんだ」
「そんなにすごいのか?」
「日暮学園に入って、俺はようやく安らぎを得られたんだ……」
俺は思わず、遠い目をして空を見上げた。
その横で、モブ山は同情するかのような哀れみの顔になる。
察してくれたらしい。
「けどよ、その子、隣の女子校に通ってるんだろ? なら安心だよな」
「ああ、少なくとも卒業までは平和そのものだ」