転生!異世界より愛をこめて
目次
第一章 俺、転生
第二章 魔剣ティルフィング
第三章 水の帝
終章
イラスト/H2SO4
一
疑問だった。少なくとも生涯の中で一番くらいの疑問ではあった。
どうして30階のビルから飛び降りても大丈夫だとか思っちゃったんだろう。
「なぜだ……」
「いや、あの、それは本当にこっちが聞きたい。マジでなんで? なんでなの? なにがしたかったの?」
現在、俺こと霊界道零矢は、神様から説教を受けていた。
周りを見渡しても神様と俺しかいない真っ白な空間。もうすこし捻ってもいいんじゃないかってくらい殺風景だ。そう、例えるなら精神と時の部屋。
「たまにいるんだよ、こんな訳のわからねぇ死に方をする奴」
神様は呆れたような顔つきでそう言った。
「ハハハ、そうなんですか」
「笑ってんじゃねぇよ、生きたくても生きられない奴だっているんだ」
それもそうだ。だけど俺も死にたかった訳ではない。それなのにこの神様はさっきから説教たれてくる。
大体この神様、ずっと気になっていたのだが、黒髪黒髭なのだ。
言っちゃ悪いが小汚い普通のおっさんって感じ。
神様と言えば、白髪白髭で神聖なイメージがあるのだがそれが一つも当て嵌まっていない。神様にはもっと神々しくあって欲しかった俺としては、少し残念である。
「あの、心の声丸聞こえだからね? それと死にたくないのになんでビルから飛び降りたの?」
「多分いけるだろうなーって」
「なに考えてんの!?」
しかしこれが真実、俺がビルから飛び降りてしまったのは本当に大丈夫だと思っていたからに他ならない。
なんていうか色々イベントが発生して助かるとか思っていたのだ。
ふふ、なんでそんなこと思ってたんだろう俺。
「なにニヤついてんだよ」
「いや、ただの思い出し笑いです」
「お前の死ぬ時の映像見てみる? 笑えないから」
神様はそう言うと、俺の返事を待たずに手を前にかざした。すると、俺の目の前に、いきなりスクリーンのようなものが現れた。
そこには見覚えのある景色が映っている。
『うし、いくか』
そんな声とともに俺が画面に映し出される。青空をバックにビルの屋上で嬉々とした表情を浮かべる俺は、正直カッコよかった。