プリンセス·プリズン!
Illust 佐伯トウマ
Design AFTERGLOW
目次
第一章 姫君たちの牢獄
第二章 看守長のお仕事
第三章 グラン=ガルバリエからの脱出
第四章 積極的思考の効用
第五章 艦隊強襲~ピアの危難
あとがき
第一章 姫君たちの牢獄
加門祝太は、小舟の上にいた。
手には頑丈な木製の手枷。足には重い鉄球がつながれた鎖。
ああ、どうしてこんなことに。
祝太は何百回目かの自問を繰り返した。
ほんの数日前まで、祝太はどこにでもいる、日本の平凡な高校生だった。
それが今は――――
船の上には、祝太と、小柄なゴブリンの船頭の二人っきり。
片手で器用に帆を操るゴブリンの船頭は、片目の潰れた顔を祝太に向けた。
「兄ちゃん、いったいなにやらかした」
「なんにもやってないよ! 俺は無実なんだ」
祝太は訴えた。ゴブリンは、キヒヒ、と皮肉な笑い声をあげた。
「みんなそう言うんだよ。この囚人護送船に乗せられるとな」
祝太はたまらず、厚い雲の立ちこめた暗い空を見上げた。
日本の皆さん、俺は今、異世界の牢獄にぶちこまれようとしています。
「ほれ、見えてきたぜ」
ゴブリンが前方を指さした。祝太も目を凝らす。
鉛色の空を背景に、天高く黒々とそそり立つ巨大な影が見えてくる。
大海原の真ん中にぽつねんとある孤島。
そこに打ち建てられた、巨人の墓石のごとき堅固な石の壁。
あまりに壮大すぎて、遠近感が狂う。その壁がいったいどれほど高いのか、祝太には推測すらできないほどだった。
「要塞だ……」
我知らず、祝太はつぶやいていた。ゴブリンがまた笑う。
「ひっひっひ、ご名答ってやつだ。ありゃ大昔に作られた海上要塞だよ。もっとも今は、監獄として使われてるがね。おまえさんがこれから一生暮らす場所よ」
「マジかよ……」
祝太はぶるるっ、と身震いする。
その威容はまるで、「絶望」そのものが凝り固まったかのようだった。
祝太の脳裏に、恐ろしい情景が次々に浮かんでは消える。
獄内にひしめくマッチョで凶悪な受刑者たち。冷酷な獄卒。一年中日の差さない冷たい地下牢。暴力。拷問……。
祝太は早くも全身の力が、へなへなと抜け