恋すると死んじゃう彼女に愛されすぎると俺が死ぬ
挿画:もっつん*
デザイン:ナカムラナナフシ(ムシカゴグラフィクス)
序章
高校一年目も終盤に差しかかった、一月中旬の金曜日。
その日、最後の授業の体育を終えて教室に戻ってきた俺は、自分の机に伏すなり、そのまま眠りこけてしまった。
千五百メートルの長距離走。
今日は朝から黙々と雪が降ってたもんだから、きつかった。
冷たい風が吹きすさぶ雪の中を走るなんて、一体どこの荒行だよ。
前の晩、無駄にネットで夜更かしして、寝不足気味だったのも、かなりこたえた。
お陰で、掃除も帰りのホームルームもスルーしてしまうほどの大爆睡……。
そんな俺がようやく目を覚ましたのは、人気の消えた放課後だった。
「さむっ……!?」
震える体をさすりながら起こし、「ふああ……」と大きく欠伸しながら、すぐ脇の窓ガラスを閉める。
寝ぼけ眼に映るのは――オレンジ色の光に包まれた夕空と、校庭にうっすらと積もった雪。もう雪はやんでいた。
放課後の教室は静まり返っている。
いつもは部活や居残りの生徒たちで騒がしいはずなんだけどな。
……そういや、今日は大事な職員会議があるって言ってたっけ。だから、生徒は早く下校するようにって、確か朝のホームルームで……。
「だから誰もいないのか……」
「誰もいないなんてことは、ないんだけどな」
突然、声が飛んできた。
「うおっ!?」
慌てて振り向くと、俺の後ろの席に座っていたクラスメイトの天之川美月さんが、片手を口元に添えてクスクスと笑っていた。
「そんな大袈裟に驚かなくてもいいのに」
「あれ、天之川さん? いたんですか?」
「うん。ずっとね」
たおやかに笑う彼女。ふんわりとした長い髪がかすかに揺れた。
「――君の寝顔に、見とれてたの」
彼女は頬杖をつきながら、俺の顔をまっすぐに見つめる。
「え……?」
動揺した俺は、彼女から目が逸らせなかった。
ワケわかんないっす……。
何せ、彼女とは今までまともに会話をしたこともなかったし、そんな冗談を言う子かどうかすら、わからなかったから。
そんな俺を見て、天之川さんはまた、クスッと笑った。
――天之川美月。
『姫君』なんてたいそうな愛称で呼ばれ、学校中の男子女子、ひいては教職員からも慕われている美少女。
実家は千年ほど前、