僕と先輩たちは主にハッケンしています。
挿画:彩葉
デザイン:ナカムラナナフシ(ムシカゴグラフィクス)
目次
第一話 大博研解散せよ!
第二話 妖怪博士の遺稿
第三話 正義の味方ができるまで
第四話 フィールドワーク指南
第五話 夢いろ迷路
終章
あとがき
第一話 大博研解散せよ!
「……はあああああああ。ヒッジョーに疲れたけど、どうにかこうにか、何とかなったなー」
部室のソファーにもたれ、長い溜め息をついてから、鬼姫先輩は、珍しく疲れた顔で結論すると、ヒョイヒョイと人差し指だけを動かして傍らの熱海ユウと本沢アテナに指示した。
「……ユウ。悪いけどインスタント珈琲コーヒーいれて。アテナ。何か甘いお菓子とかないか?」
さすがにくたびれたのだろう。凛々しい眉がさがり、ふにゃりと半笑いになっている。
「はい、珈琲ですね。すぐにいれます。少し緩めのですね?」
苦笑しながらユウが支度にかかると、まだ元気が残っているアテナはロッカーから駄菓子屋売りの安いブロックチョコレートを取り出して鬼姫先輩に手渡した。
「ハイ。おみくじ付きチョコ。鬼姫先輩、今日はきっと『大当たり』でショウですネ」
「サンキュー。……あ。『はずれ』だ。……ふむ。まあ、こういうもんだろう。勝ちの次に勝ちが拾えたら用心しろってアメリカの諺もあるかんね。……ゲンカク。こっちおいで」
「…………リューコ」
嬉しそうに〝くす……〟っと笑うと『ゲンカク』と呼ばれた着物姿をした少女の身体がフワリと浮いて、鬼姫先輩のひざにヒョイと座る。半分透き通った彼女の身体を優しく抱きしめている鬼姫先輩の胸から腰のあたりが透けて見えるのが、ちょっと艶っぽい。
『ユウ』と呼ばれた、女の子みたいに可愛い顔の優等生少年。
短い銀髪に碧眼をした長身、大柄、いつでも笑顔の美少女『アテナ』。
そして、氷色に透き通った幽霊少女の『ゲンカク』。
鬼姫先輩が最も親しく信頼する風変わりな三人組。
夕陽が落ちて夜を迎える部室に残って、安らぎのひととき。
伊豆半島の東端。静岡と神奈川を隔てる県境に位置する温泉郷、浜木綿崎。
私立名門学園の分校として名高い『海老鯛高校』が誇る文化系クラブ――
『大自然および博物学総合研究部』……長いので、略して『大博研』