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作者:田渕リョウ,さくらねこ
类型:少年向 日文
出版:2014-09-20(一迅社)
价格:¥500 原版
文库:一迅社文库

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恋詠クロニクル 挿画:さくらねこ デザイン:ナカムラナナフシ (ムシカゴグラフィクス) 序章  普段、遅刻ギリギリに登校する俺。  しかし今日に限っては違った。  まだ誰も登校していない、早朝の弥勒院学園。  校舎にはほんのりと朝もやがかかり、太陽の光も、薄く引き伸ばしたようにグラウンドに漂っている。  もちろん、俺の他に生徒の姿は見えない。遅刻未遂常習犯が早朝にウロウロしているのは、何かを怪しまれてもおかしくない状況だった。  もし生徒指導の芦屋に見つかれば『貴様、早朝から鶏卵(学校で飼育中)でも盗むつもりか!』と難癖をつけられるだろう。  歩く俺の左手方向には――高さ四メートルほどの、レンガ造りの壁が続いている。  ところどころ苔むして蔦が絡まり、かなりの年季が入っていた。  壁は学校敷地内の端から端まで伸びているが、学校と外界を隔てるものではない。  学校敷地内を〝二分割〟している壁なのだ。  なぜこのような長大なウォールが存在するのか?  名を〝理智の壁〟と言うこの障壁は、弥勒院学園の男子学部と女子学部を隔てるために建造されたもので、明治の世からここに建っている。  もともと弥勒院学園は共学ではなく、男子校の勒院高等学校と、女子校の弥生女子学園、隣り合っていたふたつの学校が合併してできた。  合併の理由は、少子化問題とか運営方針の見直しがあったらしいけど、ありていに言えば〝財政難〟という一言に集約される。  俺は誰もいない昇降口を横切って、〝理智の壁〟沿いに進んでいく。  今、俺が歩いているのは元男子校である勒院高校側の敷地で、現在における男子学部。  当然〝こちら側〟の校舎で学んでいるのは、すべて男子。  そう――弥勒院学園は共学を謳っているものの、校舎や門は〝男子側〟と〝女子側〟に分かれており、授業も完全に別。男女が机を並べて授業を受ける光景は存在しない。  共学の意味があるのか、とツッコみたくなるが、学校行事や放課後の部活動のみ、男女合同で行うことが許可されている。 「ふあ……」  歩きながら、思わずあくびが漏れる。  校舎屋上近くに設えられている時計を見ると、間もなく六時。  普段なら、まだベッドの中でもぞもぞしている時間だ。  先週あたりに桜のシーズンが終わったばかりで、春も終盤に突入している。しかし流石に早朝