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作者:扇智史,白谷こなか
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2014-04-19(一迅社)
价格:¥500 原版
文库:一迅社文库

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最終戦争は二学期をもって終了しました -壱ノ刀·カグヤ- 挿画:白谷こなか デザイン:木緒なち(KOMEWORKS) 高橋忠彦(KOMEWORKS) 序章  この夜が運命の分かれ目なのだと、誰もが予感していた。  墨で塗られたような宵闇の中、神木佑は、山上へと向かう道の真ん中に佇んでいた。心中は、自分でも奇異に思えるほど澄み渡っていた。凍りつきそうな十二月の夜寒さえ、苦にならなかった。  背後に広がる連城の市街からは、騒擾の気配が伝わってくる。ジャケットを羽織った佑の背筋を、その気配がじわりと撫でていくのは、まるで幽霊に触れられたかのような感覚だった。  クリスマスの夜、イルミネーションと音楽で飾られるべき聖夜の街は、深い夜の闇に覆われていた。市街全域が、大規模な停電に襲われていたのだ。その上、広範囲に及ぶ電波障害によって、外部との通信も困難となっていた。  張りつめるような静寂の底から、人声ばかりがかすかに耳に届く。  祝祭を楽しむはずだった人々は、予想だにしない事態によって、夜の底に閉じ込められたのだ。自宅にこもる人々、街中で騒ぐ人々、いずれもがやり場のない不安に苛まれているに違いなかった。孤立した街に蓄積した感情は、些細なきっかけですぐにも暴発するだろう。  連城にもたらされた巨大な厄災の全ての原因は、この、山道の果てにある。  『根元学会アソシエイシヨン』――長年にわたってこの街を影から支配してきた組織。  その中枢たる『零番ラボ』が、山の奥深くに存在しているのだ。  佑たちはまさにこれから、零番ラボに戦いを挑もうとしていた。  ぶあつい雲に覆われ、空には星も見えない。上空からは、うなるような風の音が押し寄せてくる。あるいはそれは、街に流れ込む〝夜素〟の響きかもしれなかった。通常は知覚できないはずの夜素の気配が感じられるというのは、いよいよ根元学会アソシエイシヨンの最終実験が大詰めを迎えているという証なのだった。  もはや、時間はない。連城が灰燼に帰する瞬間が、刻一刻と近づいている。 「……覚悟は決まった?」  佑の傍らに立つ、一森涼葉が問いかけてくる。普段と変わらないやわらかな物腰の言葉の端々も、普段通りに結った二本のお下げの先も、隠しようもなく震えていた。コートやネックウォーマーでも防ぎきれない氷点下の寒気だけが、その震えの理由で