きゃめろっと!~猛剣使いと従剣王女~
挿画:崎由けぇき
デザイン:木緒なち(KOMEWORKS)
高橋忠彦(KOMEWORKS)
序章:金色の旋風
朝日を浴びた真っ白なドレスは、目の前の少女によく似合っている。
と、彼――羽田晴人はそう思った。
それは着用者を飾りたてるものではない。あくまで着心地がよいようにと装飾を控えめにし、動きやすいよう肢体に密着した造りのドレスである。
そんな格好であるから、少女は道場というこの場ではいささか浮いてはいたが、彼女の魅力そのものを損なうことはなかった。
「これが、ただのドレスだったら……」
そんな少女を目の前で見つめながら、晴人はそう考える。
――そうだったら、オレはどうしていた?
そんな想いをよそに、少女は決意を秘めた目で静かに、手にしたものを晴人につきつけた。
もし、それが花束であったら、そのドレスによく似合っていたであろうし、晴人にとっては嬉しいものであったに違いない。だが、彼女が握りしめているのは、その身の丈を大きく上回る剣であった。
巨大な宝石から削りだしたような半透明の黄色い刀身はシンプルであったが、その柄や鍔にはミサイルのバーニアノズルのようなものがごてごてとあつらえられている、そんな対照的な造りの大剣である。
「――まぁ、こうなったのもある意味オレのせいだから、仕方ないか」
少女が大剣を両手に持ち替え、突進した。
軽々と繰り出される渾身の突きを、晴人は回避する。
続くのは、大きく真横に薙ぐような回転斬り。
長大な刀身が巨大な円を描くのと同時に、ドレスの裾が白い花のように広がり、左右に結われた豊かな金髪が旋風のように渦を描く。
道場に詰めかけた観衆がわっと沸く中、晴人はその金色の旋風を目にして――。
ああ、とても綺麗だな。と、場違いな感想を抱いたのであった。
第一章:プリンセス・ストライクダウン!
時は少し遡り、春のはじめの頃。
「あいかわらずの、閑古鳥ですわね」
背後からいきなりそう声をかけられて、制服姿の晴人はモップがけの手を止めた。
早朝、晴人の道場でのことである。
振り返ってみれば、お向かいで幼なじみでもある沢城ゆかりの姿があった。口調は意地悪なものであったが、表情の方は不満そうである。それがゆかりのいう通り閑散としている道場に対するものなのか、それともそ