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作者:小椋正雪,季月えりか
类型:少年向 书籍样本 日文
出版:2014-08-20(一迅社)
价格:¥500 原版
文库:一迅社文库

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軽口紳士と、カミサマかもしれない猫 挿画:季月えりか デザイン:木緒なち(KOMEWORKS) 小磯修平(KOMEWORKS) 序章:空からこぼれた子猫  砂浜を、ふたりで走る。  視線の先にあるのは空から落ちてきた白い影。  高度は目測五メートル、四メートル、三メートル……! 「――!」  木で出来た桟橋を踏み越えて、海へ。 「太一!」  桟橋で踏みとどまったらしい声を背後に、身を踊らせて両手を伸ばす。間にあえ――間にあった!  直後、身体が思いっきり海に叩きつけられる。  砂浜で転んだときよりずっとすごい衝撃が、全身を包んだ。水泳の授業でかならず体を垂直にするようにといわれた理由を、身をもって体験する。  上半身をエビ反りの要領で引き起こし、両腕を高く掲げどうにか水面上につきだす。同時に下半身を必死になって蹴り出し、無理矢理立ち泳ぎの姿勢に直して――。 「響姫っ!」  海水を飲み込みながらも僕はそう叫び、手首を効かせたスナップで手にしたものを桟橋へと投げる。勝手知ったるもので、我が幼なじみ殿は危なげもなくキャッチしてくれた。  続いて自由になった両手で桟橋にしがみついて、海からあがる。 「どうだった?」 「うん――無事」  ほっとしたかのように頬をほころばせて、響姫はそう言った。 「そうか……よかった」  桟橋の上に座り込んでほっと息をつく。砂浜の端から端までを全力疾走し、最後は桟橋から海へのダイブというのは、十歳の子供にはきつい話だった。 「ほらみて、やっぱり猫だった」 「――本当だ」  そっと差し出された両手の中で丸くなっているのは、まだ生まれたばかりとおぼしき白い子猫だった。 「どうして空から落ちてきたんだろう……」 「猛禽類にさらわれたんじゃないかな。それで何らかの理由で放り出されたんだろう。まぁどっちにしろ、運が良かった……」  そこで疲れがピークに達して、桟橋の上で大の字になる。 「おつかれさま、太一」  僕の顔をのぞき込んで響姫がそう労った。着ている白いワンピースとお揃いの純白のパンツが見えたが、まぁ黙っておこうと思う。  それから、少し後のこと。 「どうしても、いっちゃうの?」 「……ごめんな」  その桟橋の上で、僕と響姫は向き合っていた。