神狼と見えざる手
イラスト ◆ 桑島黎音
デザイン ◆ 伸童舎
目次
序章 序
Mission 0 貧乏はつらいよ!?
Mission 1 おいしい話にご用心
Mission 2 チャンスはピンチ!?
Mission 3 謎が謎を呼ぶ
Mission 4 あらら? 事態はまずい方向に
Mission 5 苦しみの向こう側
終章 やっぱり、貧乏はつらいよ!?
あとがき
暁の大地と呼ばれ、東の果てに位置する三日月の島。
かねてより、混沌と幻想に満ちた世界。
創生期は過ぎゆき、神話の時代もおわりを迎え、混乱の一途をたどっていく。
序章 ◆ 序
月が煌々と照らしていた。
乾いた風が、遠くの峰から吹き下ろしてくる。
夏期に入ったというのに、肌寒く感じるほどだ。
三日月の北端に位置するここドレッド山脈は、夏期を除いてほぼ通年降雪があり、連なる山々すべてが峰も高く傾斜も険しい。
加えて極寒の地であるため、永きにわたって未踏の地であった。
その自然の厳しさ、雄大さに誰もが畏敬の念を抱き、この地方を治めるホークライ王国では、信仰の対象として親しまれている。
あるとき、麓の村に奇妙な噂が流れはじめた。
雪山に立ち入った狩人が、大きな狼を見たという。
狼自体はめずらしくない。鹿やイノシシを追っている最中、出くわすことだってある。
だが、狩人が見たのは、2メートルはあろうかという巨体を白く長い体毛で覆い、人のように二本の足で歩いていたというのだ。
この地域で、魔族と呼ばれる異形の者は発見されていない。
少なくとも、ホークライ王国が誕生してからは一度も、だ。
人々は恐怖した。
噂には尾ひれが付き、得体の知れない怪物として、村から王国全体へと伝わっていく。
時の国王は事態を深刻に受け止め、調査団派遣を決定。
積雪がなくなる夏期まで待ち、派遣された歩兵小隊は、ドレッド山脈に足を踏み入れた。
狩人が目撃した地点からさらに奥へ分け入ると、やがて小さな集落にたどり着く。
そこは、山頂の窪地にできた湖の畔にあった。
怪物がいる雰囲気など、欠片もない。
むしろ牧歌的な、美しい景色が目の前に広がっていた。
山頂の村で暮らしている人々は、