あいまねっ!-Idol is money!?-
挿絵:朱
デザイン:児玉賢吾(BEE-PEE)
目次
序章『よく出ちゃうタイプですけどっ』
第一話『しっかりしてるって言われてますっ!』
第二話『ばいんばいんじゃんっ!』
第三話『俺を信じて、ついてこい』
最終話『一緒に勝ちましょうっ!』
終章『隣を歩いて、やってみますっ!』
あとがき
「お前はクビだっ!」
「どうして、どうしてですかっ! 私、結果を出してるじゃないですか!」
土砂降りの雨の中で黒髪の少女は、目を血走らせて少年の身体を揺さぶる。
「それなのに、パートナー契約を解除するなんて、これから、これからなのにっ!」
傘も差さずにずぶ濡れの彼女の姿には悲壮感が漂い、少年の制服を乱暴に掴み、もはや悲鳴にも似た泣き声で、ほんのわずかな希望にすがりつこうとする。
「なんでですか、佐藤さんっ! どうして、私のプロデュースをやめるなんて、それもこの時期になんですかっ!」
「確かにな、お前は結果を出してる。それなりに金も稼いでる」
「ならっ!」
「だが、こいつは何だ?」
少年が懐から取り出したのは、少女が楽しそうに若手男性俳優と腕組みしている写真。
「そ、それは友達で……」
瞬間。彼女は顔つきに明らかな動揺の色を浮かべ、冷や汗を流す。
「はぁはぁ、そうかそうか。ならこいつも友達か?」
追い打ちをかけるように、何枚もの写真を取り出す少年。そのいずれもが、少女が様々な男たちの腕に絡みつき、笑顔を浮かべているものだった。
それを見るやいなや、彼女は声に焦りの色を滲ませる。
「えっと、違うんです」
「裏は取ってるんだよ。この写真を撮った記者も問い詰めた。なに、簡単なことだ」
その言葉にほっとしたように笑みを浮かべる少女。しかし、少年は苛立ちを隠さず。
「お前のスキャンダルを揉み消してやった。だが、こんな写真を撮られるようなら、そもそもアイドル失格だ。もう一度言う。お前はクビだっ!」
「あっ……」
少年はもはや力を失った少女の手を振り払い、雨の中を傘も差さずに歩いていく。
「……鬼の、佐藤……」
少女の呟く声は、雨の音にかき消された。
時は流れ、四月一日。東京都心に堅牢なレンガ造りの建物があった。施設の名称は『二