引きこもりたちに俺の青春が翻弄されている 3
挿画:のん
デザイン:百足屋ユウコ&ナカムラナナフシ
(ムシカゴグラフィクス)
目次
序章
第一章 はじめてのおつかい 水着編
第二章 ホーンテッド・ハイスクール
第三章 魔女の真実
第四章 みんな大好き! 牛タンくん 実践編
第五章 夏色の結末
終章
あとがき
序章
「――そして突き刺さるような視線を感じ後ろを振り返ると、今しがた自分が乗っていた車両の中をみっしりと人の顔が埋め尽くし、虚ろな瞳で睨みつけていた」
語り終えた俺は眼前の灯りを消す。
室内が闇に包まれると同時に、「ひっ」という少女の声がした。
俺は再び灯りをともすと、同じ声で「ひゃうっ」と短い悲鳴が上がる。
「……葦原、もう何度目よ。いい加減慣れなさいよ」
俺の隣に座る紫羽が呆れ顔でため息をつく。
「だ、だってそのライト、怖過ぎますよ……」
半泣きに震える声で葦原が力なく反論する。
今しがた俺が点消灯したライトは悪魔や蛇、眼球などが絡まりあった台座に球体のガラス玉が乗せられた悪趣味な代物だ。
田中の私物にして部の備品であるこんな物を引っ張り出して何をしているのかと言えば、百物語だ。
図らずも我が『引きこもり対策部』の関係者が一堂に会した今日、優雅なアフタヌーンティーの話題は引き対初の合宿について盛り上がり、そこから各自の夏の予定や思い出話に花が咲いた。
そんな時、田中が何げなく漏らした「最近テレビでホラー映画や心霊特番、あまり見かけませんね」というひと言が発端となり、他がやらないなら自分たちでやればいい、というノリと勢いの元、急遽百物語の開催と相成った。
ホラー好きな紫羽と田中は楽しげだったが、怖い物全般が苦手な葦原と秋穂ちゃんは青い顔で辞退を申し出た。
しかし紫羽の「知らなかったのか? 凶鳥からは逃げられない」というどこかで聞いた、しかし絶望的な台詞に下級生二人は逃走を断念し、残る羽目になってしまった。
ここで俺が二人を帰してあげようと提案すればよかったのだが、先輩と田中がいそいそと怪しげなアイテムで場をセッティングし始め、さらに先生がどこからか暗幕を調達してきて場を調える。紫羽は下級生ズを両脇にガッチリと肩組みし、「楽しみね」と座った瞳で笑いかけ、始まる前から二人を怯えさせていた。
こうなってしまっては俺に止める術はな