プリンセスオーダー~絶対遵守の姫君~
挿画:明星かがよ
デザイン:児玉賢吾(BEE‐PEE)
目次
序章
1章 姫君と少年
2章 姫君と委員長
3章 姫君とクラスメイト
4章 姫君と「穴」
5章 姫君と姫君
終章
あとがき
▼序章
開け放たれた窓から、爽やかな涼風が流れ込む。
三階の窓から見える春と夏が混ざり合った風景は、否応なしに暑い季節の始まりを告げていた。
「おはよー!」「遅いぞー」「いやウチにしては早いでしょ!」
始業まであと十分ばかり。誰かが取り付けた鈴を鳴らして教室の扉が開くたびに、明るい挨拶の声が響き渡る。入ってくるクラスメイトはみな、今日も無駄にハイテンションだ。
「ってあれ、委員長いないの? 風邪でも引いたのかな?」
普段なら真っ先に登校してみなに挨拶を返してくれる真面目っこの席は、今日に限ってもぬけの殻だ。それを訝しがった女子生徒の疑問に、別の生徒がすぐさま答えを返す。
「今日は大阪だとよ。大変だよなァ委員長も」
「大阪! 粉物の聖地! いいなあ、あたしも行ってみたいー。食い倒れたいー」
「呼ばれて行ってるんだからそんな暇ねーって」
楽しげな会話を聞くとはなしに聞きながら、窓枠に腰掛けた男子生徒が一人、邪悪な笑みを浮かべる。
「……フッフフ……ヤツがいない今日こそ、差を縮める絶好のチャンスというもの……!」
「まだ懲りてなかったのか明人。お前じゃあどうやっても委員長には勝てんだろ……」
「言うな! 重要なのは自分を信じることだ! センパイもみんなそう言ってるじゃないか!」
大げさなジェスチャーで、明人と呼ばれた男子が否定する。目にも鮮やかなサンセットオレンジ色の髪をした同級生、日々木明人は、いつも呆れるほどやかましい。
「……気合い入れるのもほどほどにな。あんまり無茶すると暴走するとか言うし」
軽く溜息をついて小環契は悪友をたしなめた。
「だいたい、成績ならお前の方がずっと上なんだし、それでいいじゃん」
「ノーノー! 炎使いとしてあんなどっちつかずの温度変化に負けるわけにはいかんのだ! サモンファイア!」
やおら、いささか恥ずかしい台詞を言い放ち、明人はこれ見よがしに炎を生み出した。
明らかに高温だと見てとれる、美しい青炎だ。
これ