竜騎士の飛槍烈戦
挿画:みわべさくら
デザイン:児玉賢吾(BEE‐PEE)
目次
序章 きっと素敵なお婿さんが
第一章 僕が竜騎士になれるなら
第二章 正々堂々と勝負しましょう
第三章 唯一、竜を切り裂く爪を
第四章 ならば竜騎士の流儀で
終章 一緒に帰ろう
あとがき
序章 きっと素敵なお婿さんが
月明かりに照らされ、闇のなかにほの白く輝くものがある。
少女が一人、白磁の肌を惜しげもなく夜気にさらしていた。
水浴びをしているらしく、少女はほっそりとした身体を腰まで湖に沈めている。彼女が動くたびにぱしゃんと水音が響き渡り、銀の滴が散って星屑のように輝きを添えた。濡れて肌に張り付く髪は夜空よりも深い黒で、肌の白さをより引き立てている。
まだ幼いようだ。十をいくつか過ぎた頃か、せいぜい十代半ば。
月を見上げる両の瞳はこぼれ落ちそうなほどに大きい。丸みを帯びた顔の輪郭、ふっくらとした頬もどちらかと言えば可愛らしさを感じさせた。
その身体つきもまたちょっとすれば折れそうに細く、肩は薄く腰にかけての線は固い。
『……また大きくなった』
少女は自分の胸元を見下ろしてため息をつく。
華奢な肢体のなかで胸の膨らみだけはたっぷりとした量感を誇っていた。少女は細い両腕でそれを持ち上げてみてから、しばし肩を落とす。容貌に似合わぬ艶めかしさを誇るその部位は、少女にとってはなにやら面倒の種らしい。
やがて少女は気を取り直して沐浴を続け、髪の水気を軽く絞って満足げに息をついた。
『カーリー、手拭いタオルを……』
少女は後ろを振り返って声をかけ、身体を拭くべく陸に引き返そうとする。
しかし、すぐに湖岸を……その向こうに広がる広大な森を見つめて愛らしい顔をしかめた。
がさがさと、林立する樹木の中から物々しい音が近づいてきた。木々の枝を強引に払いのけ、足下の草をへし折る無粋な物音は森の獣にはあり得ないものだ。
はたして、全裸の少女の前に屈強な三人の男が立ちはだかった。
男たちはいずれも大振りの山刀や長剣で武装し、寄せ集めのちぐはぐな鎧で身を固めていた。それも土埃や返り血でひどく汚れている。盗賊か傭兵崩れか……まあ、どちらも大差ない。
湖のなかに佇む少女を見て盗賊は一瞬ぽ