光と闇の一年英雄
イラスト◆二ノ膳
デザイン◆伸童舎
目次
Act.1「二人で《勇者》」
キャラクター紹介「アルト」
Act.2「《勇者》はじめました」
キャラクター紹介「由良」
Act.3「《トリニティ》」
キャラクター紹介「セイラ」
Act.4「特訓」
キャラクター紹介「棗」
Act.5「大規模戦闘」
キャラクター紹介「沙織」
Act.6「永遠の《魔王》」
キャラクター紹介「魔王」
Act.7「クーデター」
キャラクター紹介「メデューサ」
Act.8「魔王奪還」
終章
あとがき
Act.1「二人で《勇者》」
大きく頭上に振りかぶったモーションから、重たい斧の一撃が振り下ろされてくる。
その攻撃をアルトは完全に見切っていた。最小限のステップで横へとかわす。
強烈な一撃だ。
だが当たらなければ、どうということはない。
すぐ眼前を、上から下へと、巨大な戦斧が抜けてゆく。髪の毛の一本二本が風圧で持っていかれそうだ。
斧は地面にめりこんだ。大きな刃が花壇の土にほとんど埋まりきる。
筋肉の束が太い腕に浮きあがる。その怪力によって土ごとめくり返しにかかる。
雄叫びがあがった。牛の鳴き声にも似た咆哮が周囲を震わせる。
そう。たしかにそれは〝牛〟だった。
アルトがいま戦っている相手は、牛の頭と、筋骨たくましい男性の肉体を持った、半人半獣の怪物――ミノタウロスなのだった。
ただしアルトがわざわざ手を出す以上、普通のミノタウロスではない。〝ロード〟と名の付くミノタウロスの中でも特別な上位種だ。体力、パワー、ともに、並のミノタウロスなど比較にならない。ただ「知力」に関してだけは、あまり違いはなさそうだが。
ミノタウロス・ロードが斧を地面から引き抜くまでのあいだ、アルトはうかつに仕掛けることはなかった。
ミノタウロスと戦うのがはじめての人間であれば、チャンスと見て攻撃していただろう。しかしミノタウロスとの戦いにおいて真に恐ろしいのは、戦斧よりもむしろショルダータックルのほうである。あの体重と突進力から繰り出されるぶちかましを食らったら、一撃でリタイヤもありうる。
相手が構えるのを待ってから、アルトはふたたび仕掛けはじめた。
今日のこ