正妻の座は渡さない!
挿画:誉
デザイン:児玉賢吾(BEE‐PEE)
目次
序章
第1章 妻宣言は突然に
第2章 妻ロワ、開幕します
第3章 妻への道は険しくて
第4章 正妻の座は誰の手に?
第5章 夫は妻を守るもの
終章
あとがき
序章 序章
「今日からはこの真由があなたの妻。ずっとお傍にいさせてくださいね、先輩……いえ、あ・な・た♡」
甘ったるい吐息が吹きかかり、全身がゾクゾクとした。
広々としたリビングで、今にも抱きつかんばかりに迫ってくる彼女――夏瀬真由ちゃんを見つめ、僕は何度も息を呑んだ。
楚々とした顔だちや長い黒髪に白いエプロン姿がよく似合っている。
「どうかしました、先輩?」
「い、いや、えっと……」
憧れと緊張、驚きとドギマギ……色々な気持ちが混じり合って、上手く言葉が出てこない。
ほんの少し前までは先輩後輩の関係でしかなかった女の子。
それが、今は僕の伴侶として目の前にいる。
「もしかして、私の新妻姿に見とれてました? ふふ」
悪戯っぽく指摘してくる真由ちゃんに、僕はますますドギマギした。
あまりにも突然に、あまりにも急激に変わってしまった関係に不思議な気分を抱きつつも、胸が甘酸っぱくときめいている。
「み、見とれてたっていうか……いきなり、あなた、なんて言われたから、その……照れちゃって」
声を上ずらせながら、僕はそれだけの言葉をようやく告げた。
「あら、先輩が望むなら何度でも言ってあげますよ。あなた♡」
「ひあぁ、だ、だから照れるってば……」
照れくささで体中がくすぐったくなる。
夫婦という関係をいやおうなしに意識させる真由ちゃんの言葉が、僕の頭の中で何度も反響した。
「中学のときの出会いはやっぱり運命だったんですね」
感慨深げにうっとりと頬を染める真由ちゃん。
確かにあれは、運命的な出会いだったのかもしれない。
僕もまた感慨に浸りながら、真由ちゃんと初めて出会ったときのことを思い起こし――、
「ちょっと待ったーっ! 何二人の世界作ってるん!?」
と、反対側から別の女の子がポニーテールを揺らしながら割って入った。
「雪人はうちと一緒に夫婦道を歩んでいくんや! 他の女にちょっかいは出