10歳の保健体育 7
【イラスト】 高見明男(XEBEC)
【仕上げ】 中野 剛(XEBEC)
【デザイン】 伸童舎
もくじ
ほーむるーむ
1時間目
2時間目
3時間目
4時間目
5時間目
6時間目
かえりのかい
あとがき
ほーむるーむ
「そういえば、お兄ちゃんの家はテレビはあるのに、観ているのを見たことがありませんね」
我が姫武邸でそんなことを、この俺、姫武静姫に言い放ったのは、隣の家に住む10歳児、似鳥はみるだ。
テレビに興味を示すとは、最近の子供らしからぬ傾向だな。
若者のテレビ離れが深刻化する、この現代においてなあ……。
「はみるんち、デカいテレビあるじゃん。あれこそ、観てるの見ないな……お前んちの親父がビジネスニュース観てるぐらいか」
「そうですね……。わたしの家も、あまりテレビを観ませんね」
「どうしてだ?」
「お姉ちゃんは……お兄ちゃんを見ている方が面白いからだって言っています」
「お前のお姉ちゃんから、俺の受信料を取ろうと思うんだが、どう思う?」
「お兄ちゃんは不祥事が多いので、受信料の支払い拒否をされると思います」
何で、俺達はいきなり、こんな社会派の会話をしているんだろうな……?
「じゃあ、民放でも観るか……」
もうちょっと俗っぽい会話が好きな俺としては、久々にテレビをつけて、話の糸口を探る。
下着の糸口を探って糸口を引っ張ると、すとーん!!と下着が足下に落ちる下着を穿いてくれないかなと、前に、はみるにお願いしてみたら、物凄い悲しそうな顔をされたことがある。
確かに、パンツのゴムが切れると悲しいからな。
……とか思いつつ、テレビを観ていると、栗の着ぐるみを着た人が、尋常じゃない高さまでジャンプをしながらはしゃいでいた。
「……何だ、あれは?」
「お兄ちゃん知らないんですか? 最近流行りのご当地ゆるキャラですよ」
「ほう……」
「グッズとか作られてすっごい人気みたいですよ?」
「もっと、ゆるキャラっぽく言ってくれ」
「……。……グッズとか作られてすっごい人気みたいまろーん!」
「すげえ! 俺、ふと振り返ると、はみるともそこそこ長い付き合いだけど、今初めて、何か、超殴りたくなってきた!!」