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作者:芝原歌織,明咲トウル
类型:乙女向 书籍样本 日文
出版:2017-02-02(讲谈社)
价格:¥594 原版
文库:讲谈社X文库White Heart

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公爵夫妻の面倒な事情 ご利用になるブラウザまたはビューワにより、表示が異なることがあります。 公爵夫妻の面倒な事情 芝原歌織 目 次 序 第一章 仮面夫婦生活への誘い 第二章 公爵夫人への変身 第三章 アカデミーへの入学 第四章 脱ひきこもりへの道 第五章 宮廷画家への挑戦  あとがき イラストレーション/明咲トウル 公爵夫妻の面倒な事情 序  手にしていた油絵が、ぶつかられた反動で宙を舞い、街路の中央に転がった。  そこに狙いを定めたかのごとく、路の先から馬車が駆け寄ってくる。  ──間に合わない!  大事な宝物が車輪に砕かれる様子を想像し、ノエルは目をつぶった。  すぐ側を一陣の風が吹き抜ける。馬車が軽快な音を立てて通り過ぎていった。  ノエルの胸は後悔でいっぱいになる。なぜちゃんと絵を抱えていなかったのだろう。自分がもっとしっかりしていれば守れたかもしれないのに。大切な絵も母親のことも──。 「おい、君。大丈夫か?」  瞳を閉じたまま悔やんでいると、頭上から涼やかな声が降ってきた。  ノエルはゆっくり顔を上げて瞠目する。白いシャツと紺のキュロットを身につけた黒髪の少年がすぐ前に立っていた。長い前髪で目元が隠れていたため、はっきり顔立ちを把握できなかったが、年は八歳のノエルよりもだいぶ上に見える。その少年が美しい風景画を手にしていたのだ。  一瞬にして絵画の世界へ引き込まれてしまう。真綿のような入道雲に、透明感のある青空。その下には金色の穂を揺らす麦畑。奥に立つポプラの大樹からは、白い鳩が飛び立っている。二度と見られないと思った景色がそこに広がっていた。ノエルが何よりも大切にしていた絵。車輪に砕かれたのではなかったのか。 「名画と言える作品だな。ぶつかって悪かった。急いでいたんだ」  差し出された絵画をノエルは呆然としながら受け取る。  どうやら、突然曲がり角から飛び出してきて、ノエルを転ばせたのは彼のようだ。謝罪のつもりで絵を拾ってきてくれたのだろう。だが、馬車が目前に迫り、ひかれるかもわからない状況の中、路に飛び出していけるものだろうか。 「絵画の破損や怪我はないようだな。それじゃ」  驚き入っていたノエルの体をざっと見回すや、少年は立ち去ろうとする。  ノエルはとっさに立ち上がり、少年のシャツを摑んだ。 「……お父さん