后退 返回首页
作者:北條三日月,沖田ちゃとら
类型:乙女向 书籍样本 日文
出版:2016-12-26(讲谈社)
价格:¥648 原版
文库:讲谈社X文库White Heart

代购:lumagic.taobao.com
秘蜜の乙女は艶惑に乱されて ご利用になるブラウザまたはビューワにより、表示が異なることがあります。 秘蜜の乙女は艶惑に乱されて 北條三日月 目 次 秘蜜の乙女は艶惑に乱されて あとがき 電子書籍特典スペシャルショートストーリー イラストレーション/沖田ちゃとら 秘蜜の乙女は艶惑に乱されて  清らかな銀色の月が、惜しみ泣くように潤んでいたことを覚えている。 「──本当によろしいのでございますね? アンジェリカお嬢様」 「ええ。バッサリとお願い。アルバート」  ドレッサーの鏡を真っ直ぐ見つめたまま、きっぱりと頷く。老執事は、モノクルの奥の瞳を痛ましげに細め──しかし異を唱えることなく、「では、失礼を」と呟いて、そっとアンジェの髪に触れた。  ランプの光に、銀の鋏が煌めく。アンジェは奥歯を嚙み締め、グッと目を瞑った。  ジョキンと、なんとも言えない音が耳元でして、ざわりと肌が粟立つ。  金色に輝く髪が、肩を滑り、足元の絨毯に落ちる。 「っ……!」  いろいろな感情が渦巻いて、胸が苦しい。つんと鼻の奥が痛くなる。けれど、更に歯を食い縛って、我慢する。泣くものか。  父の大きな手を思い出す。くしゃくしゃと、両手で髪の毛を搔き混ぜるように、いつも頭を撫でてくれた、あの優しい手。  それはもう──ない。 「……お嬢様……」 「……やめないで。アルバート。お願い」  堪え切れず頰を滑り落ちた涙を見て、執事が手を止める。しかしアンジェは間髪容れずぴしゃりと言って、鏡をにらみつけた。 「お父様は間に合わなかった。だけど私は──つかんでみせるわ。絶対に。アルバート、勘違いしないで。私は、惜しんでいるわけじゃないの」  髪など、惜しくはない。むしろ、喜んで捨てよう。目的を果たすためならば。 「そうじゃないの。ただ……」  それ以上は言葉にならない。去来する様々な思いを、言葉に表すのは難しかった。 「──お願い」  絞り出すようなアンジェの言葉に、再び鋏が動き出す。徐々に、頭が軽くなってゆく。アンジェは再び目を閉じた。  これまで、アンジェの生活を彩ってきたすべてのものに、心の中で別れを告げる。  二ヵ月後の十六歳の誕生日には、はじめて髪を結い上げ、コルセットを締め、踵の高い靴を履く──つまりは淑女の装いをして、身内のみのささやかなバースデーパーティーを楽しむ