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作者:おきょう,池上紗京
类型:乙女向 书籍样本 日文
出版:2016-10-12(Frontier Works)
价格:¥972 原版
文库:阿丽亚娜玫瑰
丛书:竜の卵を拾いまして(5)
代购:lumagic.taobao.com
竜の卵を拾いまして 5 アリアンローズ  竜の卵を拾いまして 5 著者   おきょう イラスト 池上紗京 目次   本編 「竜の卵を拾いまして 5」   番外編「幸せの卵」  この作品はフィクションです。  実在の人物・団体・事件などに一切関係ありません。  竜を愛し、竜と共に生きる国、ネイファ。  その最北端にある緑豊かな山奥に、世界で唯一の純血の白竜がたった一匹で暮らしていた。 「……うん、いい香り。やっぱり摘みたての葉で淹れたミントティーは香りが際立つわ」  その日、人の姿をとった白竜のレイヴェルは、うららかな日差しを浴びながら庭のガーデンテーブルに腰かけお茶を楽しんでいた。  普段から野外に出したままのガーデンテーブルは雨風と年月で老朽化し、艶は無くなっているし、ささくれもあちこちから飛び出ている。  けれどそれもまた味だと、彼女は気に入っていた。  しばらくお茶とクッキーを傍らに、穏やかに吹く風や、さえずる小鳥の鳴き声、屋敷の中から持ってきた本を読んで楽しんでいたのだが。  ふいに、手の中に持つカップの水面に不自然な波がおこった。  レイヴェルは顔を上げ、そこで見たものに薄青の瞳を瞬く。 「まぁ、なんだか気配が近くにあると思っていたら。ここに来るつもりだったのね」  青い空の上を飛んでいるのは真っ白な竜だ。  その竜はゆっくりと旋回しながらこちらに降りてくるようだった。 「ずいぶん上手に飛べるのねぇ。前に来てくれた時は翼も出せなかったのに、若い子の成長は早いわ」  前回、彼女がここを訪ねてから一年も経っていない。  その時は本当にただの普通の人間の女の子だったのに、見上げた姿はもう明らかに人とは呼べないものになっていた。 「送ってくれる手紙で知ってはいたけれど、本当に竜になることを選んだのね、シェイラ」  孫娘のシェイラの姿に、レイヴェルは感慨深く呟いた。 「…………」  自分の代で潰えると思っていた白竜になろうとしてくれていることを嬉しいと思う。  でも娘家族の想いや、シェイラがこれから向き合うことになるだろう数々の問題を思うと少し複雑でもあった。  大好きな人たちと生きる時間が違う。  夫も、その家族も、友人も、皆が次々に自分を置いて老いて亡くなっていってしまい、本当に一人きりになってしまう胸の張り裂けそうな悲しみを、彼女はこれから知っていくのだ。 (いいえ……あの子には、私と違って同じ時間を生きる竜もたくさん寄り添っているから。きっと大丈夫)  背中にぴったりとくっ付いている子竜たちに気づいて、思わず笑みを漏らしてしまう。 「さて。今回は一体、どんな用で来たのかしら」  もう慣れてしまった静かで落ち着いた一人の暮らしも、悪くはないけれど。  これからしばらくの間賑やかになることが、素直に嬉しいと思うのだった。   再びの旅立ち  北の空に白竜が飛ぶより少し前。  遠く離れたネイファ王都の上空には、一匹の巨大な火竜が現れていた。  気付いた人々は揃って顔を上げ、子どもたちは歓声をあげて竜の飛ぶ方向へと走りだす。  明るい太陽に照らされて輝いているようにさえ見える艶やかな鱗を纏う姿に、その火竜を見た誰もが笑みをこぼした。 「グウォォォォーー……!!」  火竜は人々の期待に応えてか、王都をぐるりと旋回した後。  次第に高度を下げていき、荘厳とたたずむ王城の敷地内へと降り立つのだった。 「……よっ、と。到着ー!」  契約者であり、このネイファの第二王子であるアウラットの自室のバルコニーに、火竜ソウマは人の姿へと身を変え降り立った。  乱れた赤い髪を額からかき上げ適当に整えてから、長い時間を飛行していた身をほぐす為に肩を回しつつ歩く。  そして彼は、すぐ目の前にあるバルコニーから室内へと続く扉を開けようとした。 「うん?」  しかし扉へと伸ばした手が、ふと感じた奇妙な感覚に気づいてピタリと止まってしまう。 「アウラットのやつ、ずいぶん楽しそうだな?」  契約をした竜と人間は、互いの感情を薄ぼんやりとだが共有することが出来る。  距離が近づいたことで幾分はっきりと契約者の感情を感じ取れるようになったとたん。  アウラットの、もの凄く楽しそうな。愉快そうな。そんな感情がソウマへと流れ込んできた。  ただ楽しいだけの感情なら、ソウマは特に気にはしない。  彼が不可解に思ったのは、その感情の中に何やらぞわりとした寒気を感じたからだ。 「すっげぇ……───嫌な予感」  眉を寄せてごくりと喉を鳴らしてから、ソウマはゆっくりと扉を開く。 「帰ったか、ソウマ」  警戒しつつ音が鳴らないように慎重に開けたはずなのに、部屋の主はあっさりと気づいたらしい。  一歩、ソウマが部屋に足を踏み入れると同時に声をかけられてしまった。  声の方を追って視線を向けると、アウラットはソファへと深く腰かけ足を組み、くつろいでいる様子だった。 (んー? 普段と変わらないように見えるが。どうだろう……)  アウラットを観察してみても、室内をぐるりと確認してみても、特別に変わったところは見当たらない。 (あの悪寒は気のせいだったのか? いや、でもなぁ)  首をひねりながら、ソウマはアウラットの居るソファまで歩いていった。 「アウラット、変わりはないか?」 「あぁ。私・は、いつも通りだな。私・は」 「……やけに言葉尻を強調するんだな」  違和感を抱えたまま、ソウマはアウラットのソファの向かい側に座った。  藍色の布張りのソファが大柄な身体の重みをきしむ音の一つもあげずに受けとめる。  そして互いがソファへと腰を沈め、ローテーブルを挟んで対峙した状態になった。  ソウマは先に用事を済ませてしまうかと、さっそく口を開く。 「水竜の里での報告だが──」 「後で良い」  アウラットがソウマの言葉を止める。  更ににやりと含みのある笑みを浮かべて、一枚の封書を手の中でひらりと揺らせてみせた。 「悪くない顔色で帰って来たということは、精霊が減っているという問題はもう解決したんだろう。それより、これがお前宛てに届いている」 「手紙? 俺にか? なんで?」  アウラットがソウマの方へと向けているのは封筒の裏側の面で、封の部分にどこかの家の家紋の封蝋が押されていた。  ソウマはそれを凝視してから首をかしげる。 「どこからだ? 記憶には無い紋のような……」  王族に近かったり、よく聞く名家であるのならアウラットの仕事に付き合ううちに覚えたものもあるが、その封蝋は本当に知らないものだった。 「分からないか?」 「分からん」 「見たことは有るはずだが。まぁ俺たちの扱う仕事での書類上に出てくることはあまり無いな。しかし家紋が分からなくても、心当たりくらいあるのではないか」 「心当たり? うーん……」  考えてみても……基本的に人間に興味がないソウマに、手紙を送ってくる人間の友人がいるわけもなく。  仕事に関することなら、手紙は自分ではなくアウラットに来るはずで。  自分に来る手紙として思いあたる、竜の里からの連絡であるなら家紋というものが無いので封蝋は無地である。  シェイラが送ってくるにしては、つい昨日に別れたはずなので時期的におかしかった。  家紋にも、送ってくる誰かにも、まったく心当たりが無いソウマは首を傾げるばかりだ。  ソウマの困惑した表情に、アウラットは口端を上げている。  この意味ありげな笑顔こそが帰った瞬間に感じた変な悪寒の原因なのだろう。  つまりこの手紙はソウマにとってとても厄介で、アウラットにとってとても面白いものだということだ。 「勿体ぶるなよ」  胡乱気な視線でアウラットに不満を訴えるソウマに、アウラットは喉の奥から「くっ」と笑いを漏らしてから、焦らしていた答えをやっと示す。 「差出人は、レヴィウス・ストヴェール。ストヴェール子爵家四兄妹の一番上、長兄からだな」 「はっ!? ストヴェール!?」 「内容は、確かめるまでもない」  アウラットが手を返し、裏を向いていた封書の前面が見えるようにソウマへと翳してみせた。  本来は受け取る側である人間の名前、もしくは所在地などが書かれている面だ。  しかしそこに大きく、やや乱雑な筆跡で書かれた短い文は違った。  確かめるまでもなく一目瞭然なその単語に、ソウマは赤い瞳を驚きに見開き、呆然と呟きを落とした。  こんなのを送られたのは、初めてだった。 「はっ、『果たし状』、だと……」  それは、ストヴェール子爵家長兄。  つまりはソウマの恋人であるシェイラの兄からの、『果たし状』だった。 「この力強い文字で内容もおおかた予想出来るが。さぁ、ソウマ。中を開いて読んでみてくれ」 「……ものっ凄い楽しそうだな、アウラット」 「楽しくないわけがないだろう。勝手に開けてしまおうかと何度苦悩したことか!」 「はぁ──」  ソウマはため息を吐きながら、アウラットから封書を受け取る。  手元にペーパーナイフが無かったので封蝋を適当に裂いて開き、中の便箋を取り出し広げた。 「えっと。何々?」  封筒の表にでかでかと書かれた『果たし状』の文字に反して、中の便箋に書かれた文章は、突然の文を謝罪する言葉から始まる丁寧なものだった。  おそらく最後の最後、封を止めた後の宛名を書く段階になって、抑えきれなくなった感情が爆発したのではないだろうか。  便箋につづられた文面の端々にも、丁寧ではあるが……恨みつらみが垣間みえる。 「どうだ?」 「んー……色々、長く書いてるけど、要約すると妹をたぶらかした不届きな竜へ正式な決闘を申し込む。自分が勝てば妹を諦めろ。ついては近いうちに王都へ伺うので予定を教えて欲しい。……って感じだな」  読み終えた後に深く息を吐き、ソファの背もたれへと思い切り身を沈ませたソウマは、疲れた様子でアウラットに訊ねた。 「アウラットは、この人……レヴィウス・ストヴェール? って人間のことを知っているのか」 「直接会ったことはないな。しかし封書が届いてからお前が帰って来るまでに情報を集めておいた」 「用意がいいな」  呆れているソウマの声に、アウラットは楽しそうに微笑む。 「かの人物は真面目で実直、少し堅すぎるきらいはあるが、優秀な男らしい。評判はそこそこ良く、次期子爵としては期待されているそうだ」 「…………」  アウラットの手に入れた情報ではおぼろげ過ぎてよく分からず、ソウマは眉を寄せ考える。 (真面目で、実直、ねぇ……。竜に『果たし状』なんて思い切ったものを叩きつけてくる辺り、ちょっと感性がずれているような気もするが)  竜たちはわざわざ『果たし状』を交わしてから勝負をするなんて回りくどいことはしないから、こんなものを受け取ったのは初めてだ。  人の……ネイファの国の伝統的な『果たし状』にのっとったとして、一般的なのは剣か拳での決闘だ。 「剣でも拳でも勝てるはずがないのに、こんなの寄越すってどういうことだ?」  たった一人の人間が、竜に敵うわけがないのに。  結果が分かりきっているのに勝負を挑むという、無謀すぎる行動が不可解で唸るしかないソウマに、アウラットは楽しそうに笑う。 「敵わなくても、十中八九は負けるだろうと分かっていても。収まらないんだろうさ」 「そういうものか?」 『家族を想う』という感情が、理解が出来なかった。  つがいになりたい相手がいるのならば勝手になればいいというのが、竜の親兄弟だ。  子竜の頃ならばいざ知らず。  成竜になってまで『家族』に干渉を受けることはほぼない。  竜であるソウマに『妹をたぶらかした男』への兄の感情は想像もつかない。  人間の慣例にのっとって、以前シェイラの父親であるストヴェール子爵に挨拶をしただけでも相当な譲歩なのだ。 「うーん? 人間って難しい」  手紙に視線を落としつつ首をひねるソウマだったが、アウラットがパンッと両手を打ち鳴らした音に顔をあげた。 「まぁ何より相手がソウマに会いたがっているのは事実なのだから」 「だから?」  アウラットは、とてもとても楽しそうに破顔する。 「──行こう」 「は? ストヴェールへ?」 「そうだ。ひと月近くかけて決闘の為に向こうに来て貰うよりも、こちらから飛んで行けば一日もかからないから楽で早いだろう」 「はぁ? え、お前も?」  別に絶対に会いたく無いという訳でも無いので、会うのは構わない。  シェイラの兄であるし、能力は目覚めていないとはいえ白竜の血を引く青年というのに興味もあった。