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作者:藤並みなと
类型:乙女向 书籍样本 日文
出版:2016-10-02(角川书店)
价格:¥580 原版
文库:角川Beans文库
丛书:厨病激発ボーイ(3)
代购:lumagic.taobao.com
厨病激発ボーイ 3 厨病激発ボーイ 3 原案/れるりり(Kitty creators) 著/藤並みなと 角川ビーンズ文庫 本作品の全部または一部を無断で複製、転載、配信、送信したり、ホームページ上に転載したりすることを禁止します。また、 本作品の内容は、底本発行時の取材・執筆内容に基づきます。  目次 第一章 理想と現実の狭間で揺れてる 第二章 バイトするなら、テーマパーク!? 第三章 蒼い堕天使がくれたモノ 第四章 冷血宰相とアンドレ 第五章 ホーリーナイトに永遠の誓いを あとがき コメント  カン! カン! カン! と木がぶつかり合う音が、廊下の一角に鳴り響く。 「必殺、破邪十文字軌り!」 「くうっ……まだまだ!」 「へえ、腕を上げたな、イエロー」 「フッ、いつまでも昔の俺のままだと思うなよ、大和?」  窓から差し込む光にキラキラと埃が舞い散る中、ほうきをまるで剣のように構えながら、不敵な笑みを交わし合うのは、体操服姿の小柄な男子と、華やかな顔立ちの金髪男子。  野田君と高嶋君だ。  またスイッチ入っちゃってるよ、この人たち……。  掃除時間だというのにチャンバラを始めてしまった二人を前にして、私、聖瑞姫は深々とため息を吐いた。 「二人とも、今は掃除──」 「ストップ! てめーら、そこまでだ」  私が口を開きかけたところで、低音美声がびしりと響き渡った。  同時に、再び相手に飛びかかろうとしていた男子たちの間に、何かが投げつけられる。あれは……ん? トランプ?? 「!?」  ハッとしたように動きを止め、振り返る野田君と高嶋君。  その視線の先では、オリーブ色の頭をした端麗な男子が、鋭い瞳で彼らを睨みつけていた──なぜか、顔の横でピッとトランプをかざして見せながら。 「これ以上俺のシマで暴れるつもりなら、てめーらもこのジャッジメント・カードの餌食だぜ?」  厨君……てっきり止めてくれると思ったのに、何一緒になって遊んでるの? 「おまえは、『執行人』のグリーン……! 仕方ない。イエロー、勝負はお預けだ」 「ああ、間が悪いな。やれやれだぜ」  野田君と高嶋君はふうっとそれぞれ吐息を漏らすや、ほうきを下におろした。よくわからないけど、剣士ごっこは一段落したらしい。  こっちこそ、やれやれだよ……と脱力しつつ、窓のガラス拭きを再開しようとした時、床に零れていた水で滑り、ずるっと身体が傾いた。 「きゃ……っ」 「危ない。──大丈夫?」  転倒しかけたところを支えられた直後、落ち着いた艶のあるアルトが耳の傍で響く。  はっと振り向いたすぐそこには、右目だけが前髪で隠された、端整な面が私を見下ろしていた。左耳に、アンティークっぽいデザインのイヤリングが揺れている。  この方は──宝塚芳佳さん!  一七二センチという長身とショートヘアの中性的な容姿から、女性ながらに「ミスター皆神」の称号を持つ二年生だ。  大人っぽいグレーのVネックニットの下に細身のパンツを穿いた足はすらりと長く、スタイル抜群。  常に沈着冷静で一見感情が読みとりにくく、ミステリアスな雰囲気を漂わせているけれど、話しかけると意外に気さくで親切だということで、皆神の女子生徒から圧倒的な支持を集めていた。十月からは生徒会の副会長も務めている。  趣味は空手と、ヴァイオリン演奏。前者は噂によれば師範代級の腕を持ち、後者は先日の文化祭のステージで披露したところ、あまりの美しい演奏と佇まいに気絶する女子生徒まで出たという極めっぷりだ。 「あ、ありがとうございます」 「気を付けてね」  思わず頰が赤くなるのを感じつつ頭を下げた私に、かすかに笑みを浮かべる宝塚副会長……うわ~うわ~、カッコいい。穏やかで颯爽として、少女漫画の王子様みたいだよ。  そこらの男子では到底太刀打ちできない気品と美しさ。  そして、宝塚副会長がいるということは── 「怪我がないようで、何よりです」  心地よく響く澄んだ声音に振り返ると、陽だまりの中に立っていたのは──まるで女神のような慈愛に満ちた微笑みを浮かべる、たおやかな美少女だった。  窓から吹き込んだ微風にサラサラと肩から零れ落ちる、艶やかな長い黒髪。  理知的な光をたたえた大きな瞳は繊細な長い睫毛に縁どられ、透明感のある白い肌は、一点の曇りもなくきめ細やかで瑞々しい。  通った鼻筋。朝摘みの苺のように色づいた、形のいい唇。  クラシカルなリボンブラウスに上品なニットカーディガンを羽織り、紺のフレアスカートをまとった姿態は、華奢だけれどしっかりと女性的な曲線を描いている。  この絵画から抜け出してきたような美少女の名前は、朝篠宮葵さん。二年生。  日本有数の財閥家の令嬢にして才色兼備、完全無欠の「奇跡の宮」とも称される、皆神高校の生徒会長だ。  朝篠宮会長と宝塚副会長のお二人は幼少のみぎりからのご友人らしく(と、つい敬語になってしまうくらい麗しい)、常に一緒に行動していて、間違いなくうちの学校一有名な美形ペアだった。  朝篠宮会長は、ぐるりと私たちを見回すと、「よかったです」と言葉を継いだ。 「こちらから、なにか変わった音がした気がしたのですが……特に問題はなく、清掃に取り組まれているようですね」 「はい。見回りお疲れ様です」  初めて間近で見る「奇跡の宮」の美しさに、少しだけ緊張しながら答えると、朝篠宮会長はやわらかな笑みを深めて、会釈をしてから、背を向けて歩き出す。  宝塚副会長も、涼やかな瞳で私たちを一瞥してから、優雅に踵を返すと会長の後に従った。 「……なんというか、現実感がないくらいキラキラした人たちだね。別世界って感じ」  思わずほおっとため息を漏らすと、高嶋君が「そうか?」と肩をすくめた。 「美人なのはわかるけど、空良ちゃんの方が千倍可愛いだろ!」  そりゃ空良ちゃんは本当に別世界、というか別次元の住人だしね。つーか、会長が離れるまで息をひそめて直立していた人が何を言う。 「ナンセンスだぜ、瑞姫……」  厨君が髪をかき上げながら、フッと笑って言い放った。 「美形は見慣れてるだろ?」  うわ~、腹立つ。 「上っ面だけじゃない高潔さというか、溢れ出る気品が誰かさんたちとは大違いなんだよね」 「ナンセンス! この厨二葉こそ見るからにセレブでノーブルだろーが」 「……」 「おい、黙るな」  無言で目をそらしたら、野田君が険しい表情で会長たちの去った方向を見つめていることに気付いた。 「どうしたの、野田君?」 「あいつらは……敵だ」  グッと両の拳を握りしめてそんなことを言う野田君に、意表をつかれる。 「何かあったのか?」  怪訝そうに眉をひそめて尋ねた厨君に、野田君は「ああ」と苦々しげに頷いた。 「つい先日、ヒーロー部の部費を要求したのに、却下された。そろいのコスチュームを買うという正当な理由があったのに──」  ……そりゃ却下されるわ。 「そーいや、最初の五千円も、まだもらえてないんだっけ?」  高嶋君の質問に、野田君がこくりと頷く。 「最初の五千円? そんなのあるの?」 「ああ。『特別創部手当』つって、創部した時に活動費として一律に配られることになってるんだけど、ちょうどその頃生徒会長選挙があってさ。今はバタバタしてるからもう少し待ってくれって言われて、もらってなかったんだよ」  確かに、ヒーロー部ができたのが十月初旬で、そのすぐ後に選挙をやっていた。朝篠宮さんが、圧倒的得票率で生徒会長に選ばれたんだよね。 「文化祭が終わって、新生徒会も落ち着いた頃だろう? だから、部費の交渉に行ったんだ。コスチューム代が無理ならせめて五千円だけでもくれって言ったのに、会長は『こちらが納得できる使用方法を説明できないなら出せない』と……横暴だ!」 「なるほど。無条件でもらえるはずのお金ももらえないのは、ちょっとおかしいね」  とはいえ、ヒーロー部なんて得体のしれない部に出費する気になれないのもよくわかる。  野田君は「そうだろう!?」と悔しげに言葉を継いだ。 「ヒーロー部の守護神が欲しいと思って、五千円で買えるアクションフィギュアを色々調べていたのに……!」  会長、賢明なご判断です。 ☆★☆  放課後、部室棟へと移動するために四人で連れ立って外へ出ると、ピンと張りつめた冷気が襲い掛かってきて、思わず身震いした。  先月末に文化祭が終わって、今は十二月の初旬。  灰色の空の下、立ち並ぶ多くの木々も葉が落ちて、景色はすっかり冬の装いだ。  生け垣に植えられた柊から、ほのかに甘く上品な香りが漂ってくる……トゲトゲの葉っぱばかり印象的だけど、柊は実は白い小さな花を咲かせるのだ。  こういう目立たなくてもいい匂いのする花って、奥ゆかしくて好きだな。 「それにしても野田君は、寒くないの?」 「鍛えてるから大丈夫だ。ヒーローたるもの、冬将軍なんかに負けるわけにはいかないからな!」  野田君は力こぶを作るようなポーズをして、軽快に答えたけど、半袖半ズボンの体操服姿は見ているだけで寒い。 「部室も寒いよな~。毛布でも持ってくるか。七海と遭難しかけた時を思い出すな……吹雪に凍えた体を人肌で温め合った山小屋の一夜……」 「確かにあの部屋、底冷えするよね。昨日なんて、部屋の中でも吐いた息白かったもん」  高嶋君の台詞の後半部分はスルーして淡々と相槌を打ったところ、「ノープロブレム!」という声とともに、厨君がパチンと指を大きく鳴らした。ん? なに、このドヤ顔。 「案ずるな。俺がヒーロー部に、対冬将軍スペシャル最強兵器を導入しておいた」  ヒーロー部の部室の扉を開けると同時に、「あっ、今のなし!」という九十九君の声が聞こえた。  頭を抱える九十九君と向かい合わせに座った中村君が、「チェックメイト!」と勝ち誇った顔で宣言し、盤上にチェスの駒を叩きつけるように置く──って、そんなことより、二人が入っているのは── 「「「こたつ!?」」」  野田君、高嶋君、私の声が重なり、厨君が笑みを浮かべながら髪をかき上げた。 「ザッツライ! 今朝のうちに運び込んでおいた。どうよ? この粋なサプライズは」 「すっげー! グリーン、ファインプレー!」 「これは神だろ、厨!」 「この俺でさえ、貴様にこの言葉を贈らざるを得ないだろう……天才か、と」 「二葉にしては上出来だよね」  大絶賛する厨病ボーイズだけど……学校に勝手にこたつを持ち込むとか、なんという規格外。これはありなの?  ますますよくわからない部活になっていくような……。  ま、いっか。わーい、こたつこたつ。それもゆったりサイズの六人用。  セレブ万歳! 「零、場所替われ。てめーじゃ力不足だ」 「言っておくけど、今は本気の三十パーセントの力しか出してなかったんだからね。ま、飽きてたとこだし別にいいけど」  厨君が中村君と向き合って座り、九十九君は側面にずれて寝転がると雑誌をめくり出す。 「ほう、次の挑戦者は厨二葉か……言っておくが俺は『黒白マジシヤのン・オ魔ブ・チ術エスボ師ード』の異名を持つ男だ。生半可なプライドはボロボロに傷つくことになるが、覚悟はいいか?」 「フッ、こっちの台詞だ。この『伝説レジエンのダリイ王・チエ殺ツクメしイト』と讃えられた俺の実力に恐れおののけ」  また適当なこと言ってるよ、この人たち。 「ああ、腹減った~」 「お、イベント始まってる。どれどれ……」  棚に置いていたお煎餅の袋を、チェス盤の横に広げる野田君。  こたつに潜り込みながらスマホゲームを始める高嶋君。  私はいつものようにお茶を淹れる。どうせみんな欲しがるから、まとめて全員分。  湯気の立つ湯吞を持つと、かじかんだ手に温かさがじんわりと沁みていった。  一口飲んで、ふうっとため息。足元はこたつでぬっくぬく。  はあ~、日本人で良かった……。 「そういえば、『冬将軍』っていうけど、春夏秋ではそーゆー奴いないのか?」 「うむ。『冬将軍』は十九世紀、モスクワに遠征したナポレオンが、厳寒を原因に敗走し、その猛烈な寒さを当時の記者が『General frost』と表現したことが語源だ。他の季節にはそういったエピソードは存在しないから、特定の擬人化表現は定着していない」  ばりん、とお煎餅をかじりながら野田君が口にした疑問に、ポーンの駒を動かしながらすかさず中村君が答える。さすがの博識だ。 「じゃあ作ろうぜ。冬が『将軍』なら夏は……あ、『提督』とか」 「提督がいるなら春は『審神者』か?」  オタクなネタで盛り上がる高嶋君と厨君。いや語呂悪いし、意味不明だし。 「『猛暑暴君』『酷暑大帝』『灼熱王』『激あつギラギラ野郎』……」  野田君、最後の何。暴走族? 「『灼熱王』は悪くないな。しかし日本の夏の酷暑には『焦熱王』の方がしっくりくるか……読みは『サマー・インフェルノ』? いや、季節感は入れたいが、もう一ひねり欲しいな……」  真剣な面持ちで勝手に夏の二つ名を考え出す野田君と中村君に、九十九君が「暇人だね」と嘲笑を浮かべる。寝そべって雑誌読んでるあなたも十分暇人だと思うけど……。 「秋はなんだと思う? 瑞姫」 「秋はひっそり来るから……『魔女』とか?」 「あ、いいじゃん、ミステリアスで」  くだらないことをしゃべりつつ、まったりしていたところ、トントン、とノックの音が聞こえた。 「依頼人か!?」  野田君が飛び跳ねるように立ち上がり、ドアを開ける。  次の瞬間、カップを口元に運んでいた高嶋君が、ブ──ッと派手にお茶を噴き出した。 「わっ、汚ねっ!」 「何してるの、高嶋君……」  慌ててティッシュで濡れた箇所を拭きながら非難したけれど、高嶋君は目を見開いたまま、ドアのところに現れた来訪者を凝視していた。 「あの……大丈夫ですか?」  こちらを見つめながら大きな瞳をパチパチと瞬いているのは、スクール風の装いの、びっくりするほど愛らしい少女だった。  やわらかそうな栗色の長い髪をサイドで緩く結び、色白で陶器のように滑らかな肌は頰だけほのかな桜色に染まっている。  すごい小顔で、童ベビー顔フエイス。ぱっちりとカールした睫毛に、さくらんぼ色のぷるんとした唇。  小柄で幼く見えるけど、バストはまろやかな存在感を主張して、チェックのスカートから伸びる脚は太すぎも細すぎもしない、理想的なラインを描いていた。  何より印象的なのは、瞳の色だ。  まるで宝石のように美しい、澄んだ神秘的な翠色──。  うわ~、『お人形さんみたい』ってきっとこういう子のことを言うんだ……と息をのむ私の傍で、高嶋君がわなわなと震える人差し指を彼女に向け、一言、呆然と呟いた。 「……空良ちゃん……!?」  …………は? ☆★☆ 「確かに、『アイライブ!』の空良ちゃんそっくりだな」 「うん、似てる」  腕組みした厨君が、まじまじと美少女を見つめながら感心したように言い、野田君もこくりと頷く。  なるほど、言われてみれば高嶋君が『俺の嫁』と公言してはばからない、かの最愛キャラが現実に飛び出したような美少女だった。 「あの……?」 「ああ、悪い。とりあえず、座ってくれ」  一人状況に置いてきぼりで困惑する美少女を、野田君が中へと案内する。  美少女はこたつを見てまた瞳を何度か瞬いた後、少しぎこちないそぶりで空いていた場所──ピシーンと背筋を伸ばして固まる高嶋君からは向かい側に腰を下ろした。  高嶋君と中村君の間に入って、彼女の正面に座った野田君が、元気よく口を開く。 「ようこそ、ヒーロー部へ! おれは部長の野田大和だ。君の名前は?」 「わたくしは、西園寺アリスと申します。クラスは1-Eですわ」 『ですわ』って言った! 今『ですわ』って言った……お嬢様だ! 「西園寺アリス……ね。名前と噂は聞いたことがあるよ。大病院の院長の一人娘でスウェーデン人の母を持つ『1-Eの幻の美少女』だっけ」